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原生林の再生・神の知恵と計らい
2026年10月31日
主任司祭 パウロ 小池 亮太
かつてニュージーランドのバンクス半島には先住民族マオリの人々の暮らしを支える豊かな原生林がありましたが、ヨーロッパからの入植者が放牧地にするために大部分を伐採してしまいました。
時が経ち、荒れ果てた半島に原生林を再生するための自然保護区が設立されましたが、在来の植物は戻らず、牧場の生け垣として持ち込まれた外来のハリエニシダだけが勢いよく広がっていきました。日当たりの良い場所で育ち、繁殖力が強く、生長すると葉が硬く鋭いトゲになるハリエニシダは駆除するのが困難な上に、土の中に種を蓄えるので焼き払っても根絶するのが難しい厄介な植物でした。しかし、保護区の管理を任された植物学者のウィルソン博士は、厄介なハリエニシダが森の再生に役立つと考えて、蔓延るままにしたのです。直射日光や強い風の当たる場所は、種が発芽しても枯れてしまいますが、ハリエニシダが茂ると日光や風が直接当たらなくなって幼木が無事に生長できる環境を作り出します。また、マメ科の植物なので窒素を地中に固定して、痩せてしまった土に栄養が蓄えられます。つまり、この外来の低木が在来の樹にとって良い環境と土壌を作ると彼は考えたのです。
実際、半島にわずかに残っていた樹々の種は風や鳥によって運ばれて、一面に広がったハリエニシダの下で育ち始めました。やがてハリエニシダの高さを超えた在来の樹が濃い影を落とすようになると、日当たりを好むハリエニシダは次第に勢いを失い、消えていきました。こうして、荒れた草地だった半島は四十年かけて原生林へと戻っていったのです。
当初「外来種を駆除しない」というウィルソン博士の考えは批判を受けましたが、原生林を再生させるためには「人の手で制御や管理をしない」という選択が最も効果的であることが、こうして証明されたのです。
バンクス半島に起きたように、もともと良いものに満ちていた人生を、良かれと思って自分の手でまったく別の状態に変えてしまうこと、あるいは、その時は正しく一番良いと思って選んだとしても、人生における選択を間違えて、荒れ果てた歩みづらい道を進むことになってしまうことがあります。
人生にそのようなことが起きた時、原生林を再生させるために自然保護区が設立されたように、当然、自分の手で本来の良かった状態に戻そうとし始めます。しかし、自分の思ったとおりに元どおりになっていくことは稀です。かえって、保護区内にハリエニシダが蔓延ってしまったように、ますます良くない状態に陥って、困難の中に閉じ込められたように感じることがあります。そうなると、ますます自分の持てる限りの知恵と出せる限りの力を使って困難にさせているものを取り除こうとします。
でも、自分を困難の中に閉じ込めているハリエニシダのように厄介で取り除くことができないものが、自分を元の状態に戻していくために必要なものなのかも知れません。そう考えることができたなら、自分の知恵と力で何とかしようとすることはやめて、「神の知恵と計らい」に信頼し、困難の中に何が起きるかをしっかり見つめることができるようになります。その時、困難の中に再生への小さな兆しがあることに気づき、それは時間がかかっても神の愛と恵みによって大きくなっていくこと、そして、最後には良かった状態に戻っていくことを信じられるようになる… たまたま目にしたニュージーランドのバンクス半島で起きた原生林の破壊と再生のドキュメンタリーを思い起こしながら、蒸し暑い真夏の夜に浮かぶ、大きく明るい満月を見上げて、このようなことを考えていたのでした。
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